19 GROWING UP ~ode to my buddy~(プリンセスプリンセス )

夏の終わりが近づいていた
わたしはといえば、旅だった彼のことを思い出す毎日だ
卒業した学校の前を通れば、また軽く肩をたたいてくれそうで
 
あの夏の彼のいじけた顔が忘れられない
 
わたしの就職先を「つまらない」と言った彼は、どこかにいった
約束だと、2人の腕時計をとめた
きっと、世界一になって戻ってくるから、なんて
そしたら、また一緒に腕時計を動かそう、なんて
アホじゃなかろうか・・・
 
泣くあんたを慰めるわたしの気持ちになってみろ!
 

 
わたしの誕生日は8月の盛りのことだった
まだ、彼が去ってから数日、カラ元気に限界を感じている頃のことだ
彼女を、待ち合わせの駐車場で待っていた
 
きみがくれた靴をはいていた
かかとならす 雨上がりの駐車場
 
「行っちゃったね」
うん、と黙ってうなづいた
「腕時計・・・止められちゃったんでしょ」
うん、と・・・
「これ、誕生日プレゼント」
彼女はわたしに小さな箱を手渡した?
なんだろ?
「開けていい?」
「もちろん」
わたしは、かわいらしい包装を丁寧に解くと、ブルーを基調にした箱が
わたしが彼女を見ると、彼女は「開けてみ」と目でサインを送った
「わぁ!」とわたしは大きな声をあげた
腕時計だ! と・・わたしには大人すぎるデザインかも・・・
彼女は笑った
「困るでしょ、時間がわからないと。現実はシビアだから・・・時間は止まってくれないよ」
「ありがとう!」
さっそく、わたしはそれを腕にはめる
あまりの嬉しさに、思わず、止められた時計を捨てたくなりそうだった
 
「行こうか」
彼女の言葉にうなづき、わたしはギターケースをかついた
免許をとりたての彼女、その新車に近寄る
 
彼女はベース、わたしとのツインボーカル
 
スタジオは押さえている
思いっきり、弾いてやる、歌ってやる!
 

 
あの夏・・彼が泣いたあの夏に、わたしが泣かなかった理由を彼女は聞いた
答えはなかったけど・・・
わたしはさ、それを歌詞にするよ
 
あなたはさ・・・失くした恋をメロディーに

選んだ心のビートが走り出すから
いじけ顔のフォトグラフに 手を振る
  
彼にはさ・・・
あのときに一緒に喜んだわたしの気持ちを想像してほしい
あのとき、見せてくれた涙を抱きしめたわたしの気持ちを想像してほしい
泣いたあなたを慰められたのは・・・わたしの宝物だよ



彼女の車の小さな窓から空を眺めていた
信号待ちが思わずため息になった

と、そのとき・・・車のエンジン音にまぎれて、ふと、空から彼の声がきこえた
いや・・歌だ・・・・
時折、歌っているようだ
元気のようだ
 
腕時計・・・捨てられるわけないじゃん!

ひとりで戸惑う夜は
借りたままの腕時計 動かせえば
19 GROWING UP
きみの笑顔 とぎれとぎれ 私まで聞こえる
GROWING UP


わたしの宝の地図
そこにたどり着くには、彼女が必要らしい
彼も必要・・・・だと思う

忘れるなよ!!

いつまでもGROWING UP
GROWING UP